2024年1月31日 水曜日
区分所有法改正の行方6(要綱案について2・建て替えなど)
皆さん、こんにちは、弁護士の桑田です。
今回は、前回に引き続き、要綱案をもとに、区分所有法改正の方向性について説明します。
今回説明するのは、区分所有建物の再生の円滑化を図る方策、と題された部分です。
今回の改正で、一番注目されているのはこの部分です。というのも、建物再生の円滑化は、建物と所有者の二つの高齢化と呼ばれるマンションの問題への対応策だからです。
もっとも、私は、これまであまり触れてきませんでした。それは、現実のマンションでは、建て替えや取り壊しといった大きな問題よりも、目の前のクレーマー対策などの方が優先度が高いと考えたからです。
とはいえ、築年数が40年を超えるマンションもこれからどんどん増えていきます。なので、建て替えなども避けて通れなくなることは明らかです。
そこで、今回、改正法の中で、建て替えなどに関係する部分を説明することにしました。
マンションの建て替えについて、現行法は、区分所有者及びその議決権の5分の4以上の賛成が必要としています。
しかし、要件が厳格であるためになかなか成立しないことに問題点がありました。
そこで、一定の場合には、区分所有者及びその議決権の4分の3以上の賛成、と要件を緩和することにしました。
一定の場合というのは、地震や火災に対する安全性に問題がある場合、外壁等が剥離し落下等のおそれがある場合、配管設備の劣化が著しい場合、高齢者等への対応に問題がある場合なです。
その他に、建物と敷地を一括して売却する場合、建物を取り壊して敷地を売却する場合、建物を取り壊す場合、建物が全部滅失した敷地に建物を再度建築する場合、敷地を売却する場合などについて、手続が検討されています。
区分所有法の改正は大変幅が広く、全部を理解することは困難と思われます。
私は、改正区分所有法の講義の開催も検討していますので、興味のある管理組合、理事会、管理会社の方はお気軽にご連絡ください。
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|2024年1月31日 水曜日
区分所有法改正の行方5(要綱案について1)
皆さん、こんにちは、弁護士の桑田です。
これまで、区分所有法の改正について、4回にわたり、法務省の中間試案をもとに解説しました。
法律の改正は、中間試案から議論が進められ要綱が示され、最終的には改正した法律が成立するという流れになります。
近時、この要綱の案が出されましたが、概ね、中間試案に沿った提案がされ、内容を深められていったようです。
今回は、要綱案が出たことを踏まえ、これまでに触れられていなかった改正について、重要な個所を説明したいと思います。
まず、総会の決議についての改正が考えられています。
要綱案には、現行法の多数決割合を維持しながら、出席した区分所有者及びその議決権の多数で決する、とあります。
規約改正を例に挙げると、4分の3の賛成が必要という割合は変わりませんが、その対象は組合員総数ではなく、出席した組合員数とするという扱いと思われます。
これまでは、マンションの維持管理に無関心で、出席もしないし、賛否の意思表示もしない組合員は、事実上、反対と同じ扱いでした。
そのため、本来必要な規約の改正なのに、特別決議に必要な4分の3の賛成を得られずに成立しなかった例は数多く見受けられます。
改正法によって、こうした事態を回避できる可能性が出てきました。
また、共用部分の変更については、さらに、一定の場合には「出席した区分所有者及びその議決権の各3分の2以上」と、要件がさらに緩和されています。
どのような場合かというと、共用部分の設置や保存に瑕疵があることで他人の権利等が侵害される場合の瑕疵の除去、高齢者等の負担軽減のための変更です。
これらの場合については、規約で、頭数だけでなく議決権数も過半数まで減じることができる、とされています。
共用部分の欠陥の除去や高齢者の身体の負担を軽くするような変更は、できるだけ要件を緩和しようという考え方です。
長くなりましたので、次回に譲りますが、その他に、建て替え決議の要件の変更など、建物と所有者の二つの高齢化と呼ばれる問題に対応した改正が予定されています。
2024年2月頃には要綱が出される予定ですので、それを待って、より詳しい説明をいたします。
とはいえ、区分所有法改正は多岐にわたり、専門用語も多いことから、理解が大変だと思います。
私は、改正区分所有法の講義も行う予定をしていますので、興味のある管理組合、理事会、管理会社の方はお気軽にご連絡ください。
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