弁護士桑田の活動日誌
2023年9月6日 水曜日
区分所有法改正の行方その2(所在不明組合員の扱い)
皆さん、こんにちは、弁護士の桑田です。
今回のテーマは、区分所有法改正の行方の第2回として、組合員の所在が不明となった場合の扱いについて説明します。
以前、私もこのブログの中で「所在不明の区分所有者への管理組合の対応」という記事を掲載しましたが、当時から、所在不明者問題が世の中に浸透し、議論が進みました。
改正において想定しているのは、所在不明の組合員と総会との関係及び所在不明組合員の専有部分等の管理です。
まず、総会との関係ですが、特に特別決議など議案の成立要件が厳格な場合、所在不明の組合員がいることによって賛成議決権数が足りず、成立が見込めなかったり、そもそもの定足数にさえ至らない場合があります。総会の招集通知や議案書を送ること自体ができないということも予想されます。
そこで、組合員が行方不明である場合に、裁判所に対して「所在等不明区分所有者の除外決定」を申し立て、認められた場合には、行方不明の組合員及びその議決権を総会の決議から除外することができるという制度が提案されています。この申立てが認められた場合には、行方不明の組合員宛の招集通知の発送は不要となります。
法務省の中間試案の補足説明によると、具体的な申立ての方法などについては検討中のようです。
次に、組合員の専有部分等の管理との関係ですが、組合員が行方不明になると専有部分を適切に維持管理することが期待できなくなります。そして、その管理不全は共用部分にも悪影響を及ぼす恐れがあります。
このような場合、先ほど挙げたブログのように、従前から、不在者財産管理人制度はありました。
ですが、不在者財産管理人は、「不在者」という人を基準にしているため、その管理も不在者の財産全般に及びます。そのため、管理人の費用も高額になりますし、選任の手続にも時間を要していました。
一方、令和5年4月1日に施行された改正民法では「所有者不明建物管理命令」という制度が新設されました。この制度は、建物が対象ですので、管理人の費用がより減額されたり、選任までの時間も短縮されるのではないかと想定されます。もっとも、区分所有法は、民法の「所有者不明建物管理命令」の適用を除外しているため、マンションではこの制度は使えませんでした。
そこで、マンションについても新たに「所有者不明専有部分管理命令」という制度が設けられました。この制度も費用が減額されたり選任が早期にされることも期待できるのではないかと考えています。
その内容は、おおよそ民法上の制度と同じであり、裁判所に申し立て、命令が出されたら、所有者不明専有部分管理人が選任され、専有部分等の管理がなされることになります。また、その効力は、共用部分や付属施設などにも及び、例えば、管理組合の総会において、所有者の代わりに議決権を行使することも原則として可能です。
なお、所有者が住んでいても住戸の中がゴミ屋敷状態になっていたり、排水管の清掃が拒否されて住戸内の配管が腐食しているということがあります。また、住戸の前の廊下に悪臭を放つゴミを放置しているケースもあります。それらについては、管理不全専有部分管理制度と管理不全共用部分管理制度という二つの制度が新設される予定です。こちらについては、別の記事で紹介します。
このように区分所有法の改正においては、所在不明の組合員への対策が設けられました。
実際にどのような改正となるかは未確定ですが、このような対策が設けられた場合には、多くの管理組合で制度を利用することが考えられます。
もっとも、一般の理事の方や管理会社の方では申し立てなどの方法がわかりにくいと思います。
申立てを希望される場合には、当職にお気軽にご相談ください。懇切丁寧に対応させていただきます。
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