弁護士桑田の活動日誌
2017年3月22日 水曜日
マンション共用部分を賃貸に出す場合の問題点
みなさん,こんにちは,弁護士の桑田です。
今回のテーマは,管理組合がマンションの共用部分を第三者に賃貸する場合の問題点についてです。
この点については,携帯電話の基地局をマンションの屋上に設置するために賃貸することの是非が問われた裁判例があります。
原審である地方裁判所では,民法第602条を超える期間の賃貸借は処分行為であって,原則として区分所有者全員で行うべきと判示しました。
ところが,控訴審である高等裁判所では,区分所有法は民法の特別法であるから,区分所有建物の共用部分の賃貸借には民法第602条の適用は排除されるとしました。
その上で,特別決議が必要な場合か普通決議で足りる場合かを検討した上で,普通決議で足りると判示し,結論が分かれました。
また,共用部分の変更については,専有部分等の使用に特別の影響を受ける場合に専有部分を所有する組合員等の承諾が必要とされています。
そこで,組合員側が,特別の影響を受けるのに自分の承諾を得ていないことも主張しました。
ですが,高等裁判所は,形式的理由としては共用部分の変更に該当しないことを挙げつつ,実質的な理由として以下のように説明して組合員側の主張を退けました。
まず,特別の影響があることの立証責任は組合員側にあると指摘した上で,電磁波の影響等の健康被害が生じると認めるに足りる証拠がないし,漠然ととした不安感に過ぎないと判示したのです。
この高等裁判所の判断からすると,管理組合が賃貸できることは前提として,決議の要件を検討することになります。
また,特別の影響が争点になる場合には,組合員側で相当の立証を求められるものと思われますので,管理組合側も組合員も慎重な準備が必要になります。
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|2017年3月9日 木曜日
管理費の不平等は有効か(一部の所有者が低い場合)
皆さん,こんにちは,弁護士の桑田です。
今回のテーマは,前回に引き続き,区分所有者間で管理費や修繕積立金の金額に不平等がある場合です。
その中でも,一部の区分所有者の管理費等が他の区分所有者より低い場合について検討します。
このような場合として,多々見られるのが,いわゆる等価交換方式の影響で,元の地主やその者からの譲受人のみ管理費が相当低く設定されている事例です。
等価交換方式というのは,地主が土地を提供する一方デベロッパーがマンションの建設費を負担し,建物の持分を出資比率に応じて分け合う方式です。
デベロッパーがマンションを建てたいがために,地主に有利な提案をする事情もあると思われます。
そして,管理組合が,このような不公平な管理費を是正しようとしたときに,元地主側が反発して,問題が顕在化するのです。
このような場合の裁判例としては,特定の区分所有者の管理費等が長期間合理的な理由もなく定額に定められた規約を変更して増額した決議について,区分所有法第30条第3項にいう区分所有者間の利害の衡平を図ったものと判断した例があります(東京地裁平成23年6月30日判決)。つまり,管理費等の是正が認められた例です。
一方,共用部分の管理費等の負担割合が区分所有者の共有持分と異なっていることについて合理的な理由があるとして公序良俗に反しないとした例もあります(東京地裁平成14年6月24日判決)。つまり,管理費が他の区分所有者より低くても良いとされた事例です。ですが,この裁判例は,マンションの敷地の一部を所有する区分所有者等について,他の区分所有者が使用料の支払いをしていなかったことから,その代わりに管理費等について一定の優遇を受けていたと認定されており,このような特別な事情があったことに注意を要します。
そこで,結果としては,やはり,相当合理性のある事情がない限り,一部の所有者のみ低い管理費等を享受することは難しいのではないかと考えられます。
管理組合の理事会の皆様の中には,一部の区分所有者が低い管理費が認められていることについて,対策を考えている組合もあるかと思います。
逆に,合理的な理由があって管理費が低額に設定されているのに,値上げを要請されている区分所有者の方もいると思います。
もっとも,どのような場合が合理的な区別に当たるのかの判断は一般の方には困難と思われます。
お困りのときには,ぜひ,私にご相談下さい。丁寧に検討したいと思います。
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|2017年3月9日 木曜日
管理費の不平等は有効か(一部の所有者が高い場合)
こんにちは,弁護士の桑田です。
本日のテーマは,区分所有者間で,管理費や修繕積立金の金額が平等でないことが許されるか,についてです。
このような場合として,一部の区分所有者の管理費等が高い場合と低い場合という二つのケースが考えられます。今回の対象は,一部の区分所有者の管理費等が高い場合についてです。このような場合としては,住宅店舗複合用途型マンションにおいて,住宅よりも店舗の管理費の方が単位床面積当たりの負担金額が高い事案などが挙げられます。
区分所有法第19条では,各区分所有者は,規約に別段の定めない限り,持分に応じて共用部分の負担に任じるとされています。そして,同法第14条では,各区分所有者の持分は,専有部分の床面積の割合によるとされています。したがって,専有部分の床面積に比例しつつ,単位床面積当たりの負担は平等であるのが原則です。
ですが,上記第19条によれば,規約に別段の定めがある場合には別の扱いが可能です。もっとも,無制限に不平等な扱いができる訳ではありません。「管理費等の負担額に差異を設ける総会決議等は,共用部分の使用頻度,程度等に通常の区分所有者と質的に異なる点があり,持分を算定の基準にすることが不合理であるとか,多額の管理費等を負担する該当者の承諾を得ているなど特段の事情のない限り」無効とした裁判例もあります(東京地裁平成14年10月29日判決)。
したがって,このような質的な違いや該当者の承諾があるときには単位床面積当たりの負担が平等でない扱いも可能になります。
管理組合の理事会の皆様の中には,一部の区分所有者から「自分の管理費が他の人より高い」との不満が持ち込まれることもあると思います。
逆に,区分所有者の皆様の中にも,自分の管理費が不当に高いのではないかと疑問に持つこともあると思います。
ですが,どちらにしても,質的に異なる点があるかどうか,判断に困ることは多いのではないでしょうか。
そのようなときには,お気軽に私にご相談下さい。丁寧に検討したいと思います。
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|2017年3月2日 木曜日
更新後の保証人の責任
こんにちは,弁護士の桑田です。
今日のテーマは「賃貸借契約が更新された場合,当初の契約時の保証人が更新後も保証債務を負うか」についてです。
このようなことが問題になる背景には,以下のような事情があります。
まず,最初の契約時には,賃貸人側も直接連絡を取って意思確認をしたり,実印の押印と印鑑証明を求めることが多いでしょう。
ですが,更新時には意思確認を行わず,保証人欄の署名押印も賃借人を介して行われる実務上の例が多いのではないでしょうか。そのため,更新時には保証人に連絡せず,賃借人自身や第三者に署名押印させてしまう場合もあるでしょう。そして,自ら署名押印していない保証人が「そのような書面は知らない」として,保証債務の履行を拒否することがあるのです。
ですが,判例上では「反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情のない限り・・・更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを免れない」とされています(最高裁平成9年11月13日判決)。この判決の事案も,更新時の契約書の連帯保証人欄には「前回と同じ」と記載されているのみで,保証人による署名押印はされていませんでしたが,保証人が債務を負うことを認めているのです。
したがって,原則として,更新後の賃貸借契約でも,保証人が責任を負うことになります。
もっとも,「特段の事情」があれば保証債務を免れるため,どのような事情が「特段の事情」に該当するかが問題となります。更新後は保証債務を負わない旨が明記されている場合や,更新時に保証人との間で保証契約を解除する合意をしていた場合などが考えられると思います。
そして,保証人に上記のような言い訳をさせるだけでも,賃貸人としては,煩わしいことになります。
そこで,このような言い訳をされないためにも,更新時にも保証意思を確認し,保証人本人から実印での署名押印を得ておくことが安全だと考えます。
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