弁護士桑田の活動日誌
2023年9月29日 金曜日
区分所有法改正の行方4(外国人所有者への対応)
皆様、こんにちは、弁護士の桑田です。
今回のテーマも、前回に引き続き、区分所有法の改正についてです。
今回は、外国人の所有者や日本人でも国外で生活しているなど、国内に住所を有していない所有者への対応についてです。
マンションの住戸を、自分が住むためではなく、賃貸に出すために所有している方は、以前からたくさんいました。
そして、近年では、外国人投資家が投資用に住戸を購入する例や、日本人の所有者であっても海外で勤務している例が増えており、連絡を取ることが困難なケースも少なくありません。
そのような場合、例えば、配管工事のための立入りの同意を得られない、管理費等を滞納しているが督促できない、総会の招集通知を送付できない、総会に出席したり議決権行使書を出すなどの対応がされないために定足数や特別決議の要件の充足に支障をきたす、といった、数々のトラブルが発生しかねません。
実際、私のもとにも、外国人区分所有者関係の相談がかなり多く寄せられています。
そこで、改正法では、区分所有者が国外にいる場合に国内管理人を選任することができるとする制度を新設することが提案されています。
そして、国内管理人を選任した場合には、管理組合への報告をしなければならないことになります。
国内管理人は、立入りの同意をする、管理費等の支払事務を行う、招集通知を受領する、議決権を行使するなどの権限が認められ、トラブル予防のために有益と思われます。
もっとも、国内管理人の選任は、区分所有者が任意に行うこととされていますので、区分所有者にその意思がなければ選任されません。
別案として、国内管理人の義務付けを行う案も出されていますが、その義務に違反した場合にどのような効果があるのかなどの課題が多いという指摘がされています。
いずれにしても、今後、制度の詳細を詰めていくことと思われますので、経緯を見守る必要があります。
外国人所有者や海外在住の日本人の区分所有者に対するトラブルがありましたら、弁護士桑田までお問い合わせください。
懇切丁寧にご対応させていただきます。
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|2023年9月21日 木曜日
区分所有法改正の行方その3(ゴミ屋敷、ゴミ放置)
皆様、こんにちは、弁護士の桑田です。
今回も前回に引き続き、2024年に予定されている区分所有法の改正についてです。
前回は区分所有者が行方不明になったことによるデメリットへの対策を説明しました。今回は「区分所有者は住戸で生活しているが、その居住者の管理が悪く、ゴミ屋敷化していたり、住戸の前の廊下にゴミを放置したような場合」への対応です。
まずは、住戸内の管理に問題がある場合への対策として、管理不全専有部分管理制度の新設が予定されています。他の居住者や管理組合法人などが、裁判所に管理不全専有部分管理命令の発令を申し立て、認められれば管理不全専有部分管理命令が発令されます。
発令の要件は「区分所有者による専有部分の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害される恐れがある場合において、必要があるとき」です。どの程度に至れば要件に該当するのかは、事例を積み重ねる必要があります。
申立てが認められれば、管理不全専有部分管理人が選任され、ゴミの撤去などができるようになります。
次に、住戸前の廊下などに私物が放置されるなど共用部分の管理が不全な場合ですが、この場合に用意された制度が、管理不全共用部分管理制度です。管理不全専有部分管理制度同様、利害関係人が申し立て、認められれば管理不全共用部分管理人が選任され、住戸前の廊下に放置されているゴミを撤去できるようになります。
利害関係人は、主にマンション外の近隣住民が想定されていますが、他の組合員による利用もありうるとされているようです。
なお、典型例が「ゴミ関連」ですので、例示していますが、もちろん、ゴミに限らず、居住者による住戸や廊下などの共用部分の管理が悪い場合は広く対象となります。
これまでも、廊下にゴミを放置した居住者に対しては使用細則違反などで提訴して撤去を求めてきましたが、勝訴しても居住者が判決に従わないとさらに解決に時間を要するという問題がありました。ですが、管理不全共用部分管理人が選任されれば、放置したゴミを処分するなどの対応が可能になり、迅速な解決ができるようになるという利点があります。
このように区分所有法の改正によってさまざまな制度が用意されることが予想されます。
とはいえ、一般の理事長や理事の皆様には、専門的な法律の理解や手続を実行することは困難と思われます。
そのようなときは、弁護士桑田にお気軽にお声がけください。
丁寧に対応いたします。
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|2023年9月6日 水曜日
区分所有法改正の行方その2(所在不明組合員の扱い)
皆さん、こんにちは、弁護士の桑田です。
今回のテーマは、区分所有法改正の行方の第2回として、組合員の所在が不明となった場合の扱いについて説明します。
以前、私もこのブログの中で「所在不明の区分所有者への管理組合の対応」という記事を掲載しましたが、当時から、所在不明者問題が世の中に浸透し、議論が進みました。
改正において想定しているのは、所在不明の組合員と総会との関係及び所在不明組合員の専有部分等の管理です。
まず、総会との関係ですが、特に特別決議など議案の成立要件が厳格な場合、所在不明の組合員がいることによって賛成議決権数が足りず、成立が見込めなかったり、そもそもの定足数にさえ至らない場合があります。総会の招集通知や議案書を送ること自体ができないということも予想されます。
そこで、組合員が行方不明である場合に、裁判所に対して「所在等不明区分所有者の除外決定」を申し立て、認められた場合には、行方不明の組合員及びその議決権を総会の決議から除外することができるという制度が提案されています。この申立てが認められた場合には、行方不明の組合員宛の招集通知の発送は不要となります。
法務省の中間試案の補足説明によると、具体的な申立ての方法などについては検討中のようです。
次に、組合員の専有部分等の管理との関係ですが、組合員が行方不明になると専有部分を適切に維持管理することが期待できなくなります。そして、その管理不全は共用部分にも悪影響を及ぼす恐れがあります。
このような場合、先ほど挙げたブログのように、従前から、不在者財産管理人制度はありました。
ですが、不在者財産管理人は、「不在者」という人を基準にしているため、その管理も不在者の財産全般に及びます。そのため、管理人の費用も高額になりますし、選任の手続にも時間を要していました。
一方、令和5年4月1日に施行された改正民法では「所有者不明建物管理命令」という制度が新設されました。この制度は、建物が対象ですので、管理人の費用がより減額されたり、選任までの時間も短縮されるのではないかと想定されます。もっとも、区分所有法は、民法の「所有者不明建物管理命令」の適用を除外しているため、マンションではこの制度は使えませんでした。
そこで、マンションについても新たに「所有者不明専有部分管理命令」という制度が設けられました。この制度も費用が減額されたり選任が早期にされることも期待できるのではないかと考えています。
その内容は、おおよそ民法上の制度と同じであり、裁判所に申し立て、命令が出されたら、所有者不明専有部分管理人が選任され、専有部分等の管理がなされることになります。また、その効力は、共用部分や付属施設などにも及び、例えば、管理組合の総会において、所有者の代わりに議決権を行使することも原則として可能です。
なお、所有者が住んでいても住戸の中がゴミ屋敷状態になっていたり、排水管の清掃が拒否されて住戸内の配管が腐食しているということがあります。また、住戸の前の廊下に悪臭を放つゴミを放置しているケースもあります。それらについては、管理不全専有部分管理制度と管理不全共用部分管理制度という二つの制度が新設される予定です。こちらについては、別の記事で紹介します。
このように区分所有法の改正においては、所在不明の組合員への対策が設けられました。
実際にどのような改正となるかは未確定ですが、このような対策が設けられた場合には、多くの管理組合で制度を利用することが考えられます。
もっとも、一般の理事の方や管理会社の方では申し立てなどの方法がわかりにくいと思います。
申立てを希望される場合には、当職にお気軽にご相談ください。懇切丁寧に対応させていただきます。
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|2023年9月5日 火曜日
区分所有法改正の行方その1(改正の流れ)
皆さん、こんにちは、弁護士の桑田です。
今回のテーマは、区分所有法の改正についてです。
個別の論点に入る前に、まず、区分所有法の改正の大まかな流れを見ていきたいと思います。
区分所有法に限らず、法律は技術革新や国民の意識の変化に合わせて、その都度、改正が図られます。例えば、離婚後の未成年の子の親権者は父母のどちらかですが、家族法の改正では、共同親権の導入も検討されています。これも、離婚後も子の養育に関わっていたいという両親が増えてきたことの反映でしょう。ただし、多様な意見があり、共同親権が実際に導入されるかは不明です。
区分所有法に話を戻しますと、今回の改正は、主に区分所有建物管理の円滑化、区分所有建物の再生の円滑化、被災区分所有建物の再生の円滑化がテーマとなっています。
2024年の通常国会での改正案の提出を目指すとのことです。通常国会は、1月中旬に始まり、6月に終わりますので、来年の今頃は改正区分所有法が成立しているかもしれません。
改正の内容は広範にわたっていますが、「再生の円滑化」というのは、主として建て替えに関する要件などの検討が対象となっています。
改正に先立って、法務省から区分所有法改正の中間試案が出されました。
次回以降のブログでは、中間試案をもとに主に「区分所有建物管理の円滑化」について説明していきます。
具体的には、所在不明の区分所有者の扱い、特別決議の多数決要件の緩和、専有部分の管理が不全な場合の対応策、区分所有者が国外にいる場合の対応などです。
これらは、居住者の行方不明、専有部分のゴミ屋敷化、外国人の区分所有者のトラブルなど、理事会や管理会社が大変苦労されてきたところであり、改正の行方はしっかり追っていきたいと思います。
もっとも、一般の理事の方には、ブログを読んでもわからないという方もいらっしゃると思います。
区分所有法については、当職も講演や講義を行うこともできます。
区分所有法の講演や、理事会での簡単な勉強会などをご希望される場合は、いつでもお声がけください。
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