トピック
2012年9月19日 水曜日
少額の請求には支払督促,少額訴訟の活用を!
みなさん,こんにちは,弁護士の桑田です。
今回のテーマは支払督促と少額訴訟です。
弁護士をしていると,日々,いろいろな相談を持ちかけられます。その中には,弁護士が代理人として,適切な処理をしなければならないものも当然あります。一方,10万円や20万円と行った少額の請求の場合,費用対効果を考えると弁護士に委任するのは得策とは言えません。かといって手をこまねいているわけにもいかないでしょう。
そのような場合に,弁護士には法律相談でのアドバイスを求めて,相談者ご本人が法的な対応を行うことがあります。そのような本人でも対応可能な手続として,支払督促や少額訴訟があります。
支払督促は,債務者の住所地を管轄する簡易裁判所に申立をして行います。申立書は数枚のみですし,裁判所書記官が記載方法を教えてくれます。支払督促が送達されてから2週間以内に債務者が異議を出さなければ債権者の申立により裁判所は仮執行宣言を出しますので,預金の差押などの強制執行が可能となるわけです。もっとも,債務者から異議(督促異議と言います。)が出されると通常訴訟に移行してしまうので,債務者との間で債権の有無や金額に争いがある場合には有効ではありません。なお,正確に言うと,支払督促は請求金額に制限があるわけではないので「少額の請求」に限らず使える手段ですが,通常は金額が大きくなると,相手方から異議が出るケースが多くなると思います。
少額訴訟は,請求金額が60万円以下の場合に利用可能な訴訟制度で,簡易裁判所で取り扱っています。「簡易」裁判所という名称の通り,もともと訴額140万円以下の請求を対象としていますが,その中でも60万円以下の請求については手続を簡易化し,期日は1回,調べる証拠は即時取り調べ可能なもののみ,判決も即日言い渡しです。そのため,少額の請求について裁判所を利用する場合には大変便利な制度です。ただし,支払督促と同じように,被告が通常訴訟を希望した場合には通常の手続に移行します。また,支払督促は異議が出なければ仮執行宣言が出されるのに対し,少額訴訟では必ずしも原告が勝訴するわけではありません。1回で終わってしまうのですから,原告は勝訴できるように証拠を十分に揃えておく必要があります。
このように支払督促や少額訴訟にはメリットデメリットがあります。どのような手続が適切かの判断のためにも,ぜひお気軽にご相談下さい。
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|2012年9月12日 水曜日
相続 準備がものをいう
みなさん,こんにちは,弁護士の桑田です。
本日のテーマは相続の準備です。タイトルは本日の日経新聞の記事から取りました。
この記事には,相続の準備として遺言の作成や遺産である自宅などの不動産の分割方法について説明しています。
意識してみると,本当に相続や遺言について書かれた記事は多く,世の中で重大な関心を集めていることだと再確認しました。
私も,これまでこのブログの中で,遺言や相続について書いていますし,ほぼ常時,遺産分割案件の依頼を受けています。
やはり,だれにとっても遺言や相続は避けて通れないトラブルなのでしょう。
今回は,その中でも財産目録の作成について説明したいと思います。
遺言の作成や遺産分割の依頼を受けるとき,まず最初に行うのが「遺産の内容」の確認です。ところが,遺言の作成のように,被相続人の生前であっても,自分の財産の内容を確定できないことがしばしばあります。たとえば,不動産をいくつも持っていて,全て管理会社に任せているような場合です。まして,お亡くなりになった後の相続で遺産の所在を確認することはとても大変な作業です。
そこで,相続の準備として,財産目録を作成することはとても大切です。預貯金,不動産,保険くらいは把握されていると思いますが,株式,社債ももちろん遺産に入ります。自営業者が法人化している場合は,その株式も当然相続の対象となるのですが,かえって自社の株式の認識が薄い経営者の方も中にはいます。事業承継とも関連して自社の株式の処理は大変重要ですから,しっかりと把握していないといけません。その他,遺産に当たるとは限りませんが,自営業者の場合,企業共済などに加入して死亡退職金が出る場合があります。企業共済に加入していることを遺族が知らないと死亡退職金を受け取り損ねることもあり得るのです。
まだ,被相続人が生前で元気なうちに,遺産となるであろう財産を総ざらいして財産目録を作っておくことはとても大切なことなのです。弁護士の役に立てる分野だと思いますので,財産目録の作成を検討されている方はお気軽にご相談下さい。
その他のご相談については,相続全般は
http://www.kuwata-lawoffice.net/souzoku/#a02
未成年者の関係する遺産分割については
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/09/post-33-343015.html
遺言執行者については
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/07/post-27-314543.html
遺言の作成については
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/06/post-13-285125.html
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|2012年9月11日 火曜日
マンション管理会社との契約の途中解約
みなさん,こんにちは,弁護士の桑田です。
今回のテーマは,「マンション管理組合が管理会社との契約を途中で解約する場合の問題点」についてです。
今年の7月下旬から8月初旬にかけて日経新聞上で「マンション誰のものか 潜むリスク」という連載がありました。
その中で,マンションに潜むリスクとして,大規模修繕の大変さと並んで,管理会社の従業員による横領や管理会社の紹介した工事業者の工事代金が割高なケースなど管理会社をめぐるトラブルが記載されています。
管理会社は,管理組合から委託を受けてマンションの管理事務を行う事を業とする会社を言います。
管理会社に委託する業務として,標準管理委託契約書では,事務管理業務,管理員業務,清掃業務,建物・設備管理業務などが挙げられます。もちろん,これらの業務が適正であれば問題はありませんが,上記のように横領は論外としても,不適切な事務処理を行うことは十分に考えられるでしょう。
そのような場合に,契約期間の途中でも解約できるのでしょうか。
マンション管理組合と管理会社との契約は委任契約に準じるという側面があります。そして,民法には,「相手方に不利な時期に委任を解除したときは,・・・相手方の損害を賠償しなければならない」という規定(651条2項)があります。そこで,マンション管理組合がエレベーター会社との契約を途中解約しようとした際に,エレベーター会社が「契約期間中に得られるべきであった保守点検料」を損害として賠償請求した事案があります。
東京地裁平成15年5月21日判決は,エレベーター会社の主張する損害は事務処理とは別の報酬の喪失であり,その他にエレベーター会社に不利益な事情が窺われないから「不利な時期」の解約ではないとして,損害賠償請求を棄却しました。
この判決は,マンション管理組合が管理会社との契約を途中解約する場合でも損害賠償が認められない方向を示す判決と言えると思います。
その他のマンショントラブルは以下のページをご覧下さい。
マンショントラブル全般は
http://www.kuwata-lawoffice.net/manshon/
マンション内の水漏れ事故については
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/08/post-31-328055.html
マンション内のペットトラブルは
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/09/post-37-348244.html
マンション内でのビラ配りについては
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/09/post-1-342591.html
滞納管理費の回収については
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/07/post-23-306215.html
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