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トピック

2014年1月9日 木曜日

工科大学での講演(交通事故)

皆様,こんにちは,弁護士の桑田です。
本日はいつもの法律問題ではなく,大学の講演についての感想です。

 昨年12月3日,神奈川県のある工科大学にて,交通事故についての講演を行う機会を頂きました。これは,同大学の教授とご縁があり,その教授から学生の危機管理を高めたいという強い希望を受けて行われたものです。
 もっとも,「危機管理」という言葉は大変意味が広く,国家から個人まで対象は無限に広がります。そこで,危機管理の中でも学生がなじみ深いものが良いと考え,「交通事故の被害者になった場合の対応」「交通事故の加害者になってしまった場合の対応」の両方について基礎的な講演をさせて頂きました。理系の学生ということもあり,なるべく堅い表現は避けて説明したつもりです。

 どのような評価が下されたのかは,私には知るよしもありませんが,講演の準備を通じて自分の知識不足の補充や理解の深まりを実感でき,講演をする側にも大変良い勉強になったと思います。

 これからも講演の機会があれば,多くのテーマにトライしたいと思っています。

投稿者 弁護士 桑田 英隆 | 記事URL

2013年7月19日 金曜日

マンション管理士の活躍

みなさん,こんにちは,弁護士の桑田です。
今回のテーマは「マンション管理士の活躍について」です。
軽い読み物として見ていただければ幸いです。

日経新聞の連載記事の中に「マンション 誰のものか」という特集がときどき組まれます。
先日,この連載で「スラム化を防ぎ自主管理」というタイトルの記事が掲載されました。
一歩間違えればスラム化の道をたどったかもしれないマンションが,マンション管理士の活躍で適切な自主管理を行っています。

この記事には,管理会社が事実上倒産したマンションについて,管理士が管理規約の改正や耐震補強工事に尽力した例,管理会社から解約を突きつけられたマンションが管理士と一緒になって滞納管理費を回収した例などが書かれていました。

私も,弁護士であると同時にマンション管理士ですから,同業者の皆さんの活躍は嬉しくあり,また刺激にもなります。
他のマンション管理士に負けないよう私も頑張らないといけないと,改めて肝に銘じる次第です。

その他のマンションに関わるトラブルは,以下のブログをご参照下さい。
マンション住戸の目的外使用は
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2013/03/post-47-466985.html
 マンション内の騒音問題は
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/05/post-7-272598.html
 マンション内の水漏れ事故については
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/08/post-31-328055.html
 マンション内での誹謗中傷については
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/09/post-1-342591.html
 管理組合の理事長を解任する方法については
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/07/post-25-310679.html
 マンションの構造などに欠陥がある場合の損害賠償は
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/07/post-1-307678.html 
 マンショントラブル全般は
http://www.kuwata-lawoffice.net/manshon/

投稿者 弁護士 桑田 英隆 | 記事URL

2013年1月23日 水曜日

相続税増税の東京への影響と対策

みなさん,こんにちは,弁護士の桑田です。
今回のテーマは,「相続税の改正に対する東京への影響と対策」です。
本日の日経新聞によると,2013年税制改正について,自公民の3党間で相続税の増税で合意したとのことです。
主要3党の合意ですから,実現する可能性がかなり高いものと思われます。

その内容は,最高税率の引き上げ基礎控除の縮小です。
相続財産6億円超の部分に55%の税率を新たに設定し,2億円超3億円までの部分の税率も40%から45%に引き上げました。
また,相続税には,課税対象とされない部分(基礎控除)があります。これまで,5000万円+1000万円×法定相続人数が基礎控除とされていました。つまり,法定相続人が一人だとしても,6000万円までは相続税がかからなかったのです。ところが,今回の改正では,基礎控除が「3000万円+600万円×法定相続人数」となりました。そのため,いわゆる富裕層だけでなく,たとえば不動産価格が4000万円である程度の預貯金などを持つ方も相続税の対象となります。特に東京は地価が高いため,東京に不動産を持つ方が相続税の対象となる可能性は高まり,10%超となるとの試算もあります。

このように,これまでは相続税と無縁と思われた方でも,相続税対策をする必要が出てきました。
まず税務的な対策としては,配偶者控除の利用や相続時精算課税制度を利用した節税が考えられます。
加えて「遺産を誰にどのように相続させるのが節税や相続人間のトラブルを防げるか」を検討して遺言を作ることをお勧めします。
私は,税理士法人とも提携しています。法的,税務的にもっとも適切な相続税対策を行うことができますので,お気軽にご相談下さい。

 その他のご相談については,相続全般は
http://www.kuwata-lawoffice.net/souzoku/#a02
 未成年者の関係する遺産分割については
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/09/post-33-343015.html
 遺言執行者については
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/07/post-27-314543.html
 遺言の作成については
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/06/post-13-285125.html
 相続の準備については
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/09/post-36-347542.html

投稿者 弁護士 桑田 英隆 | 記事URL

2013年1月23日 水曜日

八日目の蝉

みなさん,こんにちは,弁護士の桑田です。
今回は,いつものような法律テーマではなく,最近,見た映画の雑感です。
気楽にお聞き流し下さい。

「八日目の蝉」は,角田光代原作,平成23年4月公開の映画です。
当時から気になっていましたが,私はテレビ放送を録画したものを,さらにだいぶ遅れて見たわけです(^_^;)
女性が不倫相手の子供(新生児)を誘拐し,自分の子供として育てるというストーリ-でした。
子供が誘拐犯を自分の母親と思って育つことによる悲劇,誘拐された後の真の両親との関係などが描かれています。

私はそれほど映画を見る方ではありませんし感動しやすい質でもありませんが,この映画には泣かされました。
私にも2歳になる長男がいるからかも知れません。
「もし子供が誘拐されていたら」とか,勝手に想像してしまいます。逆に,誘拐犯の立場でも,0歳から4歳まで我が子として育てており,引き離されることには「もし,自分の子供と無理矢理別れされたら」と,やはり想像をしてしまうのです。

この映画を見ると,小説家や脚本家が,いかに想像力を駆け巡らせているか,いかに人をよく観察しているか,が分かります。
人の気持ちが分からないと,感動させることは出来ないでしょうし,セリフ一つとっても「あるある,子供の言いそうなこと」という言い回しが多く驚きました。

実は,弁護士という職業も「想像力をめぐらし,人を観察する」ことがとても大切です。たとえば,相手方はから「1000万円を貸したから返せ」と返還を求められている場合でも「そのような大金であれば,預金など出所がはっきりしているはずであるし,振込送金手続をしていないとおかしい」「通帳のような証拠が出てこないのは,本当は貸していないからだ」として反論するのです。
ですから,小説家や脚本家の仕事には尊敬の念がありますし,見習おうと決意も新たにします。

以上,とりとめのない雑感でしたm(_ _)m

投稿者 弁護士 桑田 英隆 | 記事URL

2012年11月12日 月曜日

東京都立病院による未払医療費の債権回収

こんにちは,弁護士の桑田です。
今回のテーマは,都立病院の行った未払いの医療費の回収についてです。
先日の日経新聞の記事に掲載されていたものです。

記事は,東京都立8病院が未払いの医療費の回収に成功したことを伝えています。
その方法は,「治療費の回収を専門に手掛ける非常勤職員の配置」と「回収業務の委任契約を弁護士と締結」することです。
まず,専門職員が毎日多いときは20人程度に電話したり月に1,2回直接訪問して支払を促します。
また,院長の代理として弁護士が支払を求める文書を作成し,代理人として文書には弁護士名も記載するようです。
支払い能力があるにもかかわらず無視する悪質な未払者に対しては裁判所を利用した支払督促を行うとのことでした。
都庁の都病院経営本部によると「ここまで強い措置を取れば大半の人が支払に応じる」とのことです。一方,生活の困窮で支払が困難な方には弁護士が公的補助制度を活用した返済を助言しているようです。

最近では,病院に限らず地方自治体でも弁護士を活用して債権回収を図る例が増えているようです。
現在の経済状況では治療費の他マンションの管理費などの未払も増加しており,弁護士を活用した債権回収が重要な手段となっており,また一考の価値があると思います。
 その他,債権回収の相談事例については
http://www.kuwata-lawoffice.net/kigyouhoumu/#__question1_1__
 支払督促については
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/09/post-39-350957.html 
 をご覧下さい。

投稿者 弁護士 桑田 英隆 | 記事URL

2012年9月19日 水曜日

少額の請求には支払督促,少額訴訟の活用を!

みなさん,こんにちは,弁護士の桑田です。
今回のテーマは支払督促少額訴訟です。
弁護士をしていると,日々,いろいろな相談を持ちかけられます。その中には,弁護士が代理人として,適切な処理をしなければならないものも当然あります。一方,10万円や20万円と行った少額の請求の場合,費用対効果を考えると弁護士に委任するのは得策とは言えません。かといって手をこまねいているわけにもいかないでしょう。
そのような場合に,弁護士には法律相談でのアドバイスを求めて,相談者ご本人が法的な対応を行うことがあります。そのような本人でも対応可能な手続として,支払督促や少額訴訟があります。

支払督促は,債務者の住所地を管轄する簡易裁判所に申立をして行います。申立書は数枚のみですし,裁判所書記官が記載方法を教えてくれます。支払督促が送達されてから2週間以内に債務者が異議を出さなければ債権者の申立により裁判所は仮執行宣言を出しますので,預金の差押などの強制執行が可能となるわけです。もっとも,債務者から異議(督促異議と言います。)が出されると通常訴訟に移行してしまうので,債務者との間で債権の有無や金額に争いがある場合には有効ではありません。なお,正確に言うと,支払督促は請求金額に制限があるわけではないので「少額の請求」に限らず使える手段ですが,通常は金額が大きくなると,相手方から異議が出るケースが多くなると思います。

少額訴訟は,請求金額が60万円以下の場合に利用可能な訴訟制度で,簡易裁判所で取り扱っています。「簡易」裁判所という名称の通り,もともと訴額140万円以下の請求を対象としていますが,その中でも60万円以下の請求については手続を簡易化し,期日は1回調べる証拠は即時取り調べ可能なもののみ判決も即日言い渡しです。そのため,少額の請求について裁判所を利用する場合には大変便利な制度です。ただし,支払督促と同じように,被告が通常訴訟を希望した場合には通常の手続に移行します。また,支払督促は異議が出なければ仮執行宣言が出されるのに対し,少額訴訟では必ずしも原告が勝訴するわけではありません。1回で終わってしまうのですから,原告は勝訴できるように証拠を十分に揃えておく必要があります。

このように支払督促や少額訴訟にはメリットデメリットがあります。どのような手続が適切かの判断のためにも,ぜひお気軽にご相談下さい。

投稿者 弁護士 桑田 英隆 | 記事URL

2012年9月12日 水曜日

相続 準備がものをいう

みなさん,こんにちは,弁護士の桑田です。
本日のテーマは相続の準備です。タイトルは本日の日経新聞の記事から取りました。
この記事には,相続の準備として遺言の作成や遺産である自宅などの不動産の分割方法について説明しています。
意識してみると,本当に相続や遺言について書かれた記事は多く,世の中で重大な関心を集めていることだと再確認しました。

私も,これまでこのブログの中で,遺言や相続について書いていますし,ほぼ常時,遺産分割案件の依頼を受けています。
やはり,だれにとっても遺言や相続は避けて通れないトラブルなのでしょう。

今回は,その中でも財産目録の作成について説明したいと思います。
遺言の作成や遺産分割の依頼を受けるとき,まず最初に行うのが「遺産の内容」の確認です。ところが,遺言の作成のように,被相続人の生前であっても,自分の財産の内容を確定できないことがしばしばあります。たとえば,不動産をいくつも持っていて,全て管理会社に任せているような場合です。まして,お亡くなりになった後の相続で遺産の所在を確認することはとても大変な作業です。

そこで,相続の準備として,財産目録を作成することはとても大切です。預貯金,不動産,保険くらいは把握されていると思いますが,株式,社債ももちろん遺産に入ります。自営業者が法人化している場合は,その株式も当然相続の対象となるのですが,かえって自社の株式の認識が薄い経営者の方も中にはいます。事業承継とも関連して自社の株式の処理は大変重要ですから,しっかりと把握していないといけません。その他,遺産に当たるとは限りませんが,自営業者の場合,企業共済などに加入して死亡退職金が出る場合があります。企業共済に加入していることを遺族が知らないと死亡退職金を受け取り損ねることもあり得るのです。

まだ,被相続人が生前で元気なうちに,遺産となるであろう財産を総ざらいして財産目録を作っておくことはとても大切なことなのです。弁護士の役に立てる分野だと思いますので,財産目録の作成を検討されている方はお気軽にご相談下さい。
 その他のご相談については,相続全般は
http://www.kuwata-lawoffice.net/souzoku/#a02
 未成年者の関係する遺産分割については
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/09/post-33-343015.html
 遺言執行者については
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/07/post-27-314543.html
 遺言の作成については
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/06/post-13-285125.html

投稿者 弁護士 桑田 英隆 | 記事URL

2012年9月11日 火曜日

マンション管理会社との契約の途中解約

みなさん,こんにちは,弁護士の桑田です。
今回のテーマは,「マンション管理組合が管理会社との契約を途中で解約する場合の問題点」についてです。
今年の7月下旬から8月初旬にかけて日経新聞上で「マンション誰のものか 潜むリスク」という連載がありました。
その中で,マンションに潜むリスクとして,大規模修繕の大変さと並んで,管理会社の従業員による横領や管理会社の紹介した工事業者の工事代金が割高なケースなど管理会社をめぐるトラブルが記載されています。

管理会社は,管理組合から委託を受けてマンションの管理事務を行う事を業とする会社を言います。
管理会社に委託する業務として,標準管理委託契約書では,事務管理業務,管理員業務,清掃業務,建物・設備管理業務などが挙げられます。もちろん,これらの業務が適正であれば問題はありませんが,上記のように横領は論外としても,不適切な事務処理を行うことは十分に考えられるでしょう。

そのような場合に,契約期間の途中でも解約できるのでしょうか。
マンション管理組合と管理会社との契約は委任契約に準じるという側面があります。そして,民法には,「相手方に不利な時期に委任を解除したときは,・・・相手方の損害を賠償しなければならない」という規定(651条2項)があります。そこで,マンション管理組合がエレベーター会社との契約を途中解約しようとした際に,エレベーター会社が「契約期間中に得られるべきであった保守点検料」を損害として賠償請求した事案があります。
東京地裁平成15年5月21日判決は,エレベーター会社の主張する損害は事務処理とは別の報酬の喪失であり,その他にエレベーター会社に不利益な事情が窺われないから「不利な時期」の解約ではないとして,損害賠償請求を棄却しました。
この判決は,マンション管理組合が管理会社との契約を途中解約する場合でも損害賠償が認められない方向を示す判決と言えると思います。
その他のマンショントラブルは以下のページをご覧下さい。
 マンショントラブル全般は
http://www.kuwata-lawoffice.net/manshon/
 マンション内の水漏れ事故については
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/08/post-31-328055.html
 マンション内のペットトラブルは
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/09/post-37-348244.html
 マンション内でのビラ配りについては
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/09/post-1-342591.html
 滞納管理費の回収については
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/07/post-23-306215.html

投稿者 弁護士 桑田 英隆 | 記事URL

2012年7月18日 水曜日

定年後の継続雇用

みなさん,こんにちは,弁護士の桑田です。
今回のテーマは,「定年後の継続雇用 基準は」です。
これは平成24年7月16日付日経新聞朝刊の法務記事のタイトルです。

年金支給開始年齢の引き上げに伴い,定年後に年金がもらえない空白時期が生じるとの懸念から高年齢者雇用安定法が制定されました。
高年齢者安定法は,「定年の引き上げ」「継続雇用制度の導入」「定年制の廃止」のいずれかを企業に選ぶよう義務づけています。定年の引き上げや定年制の廃止では,原則として希望者全員の雇用を継続しなければならず会社の負担が重いため,大半の企業が継続雇用制度を導入しています。継続雇用制度の中の再雇用制度による場合,いったん雇用関係を終了するので雇用条件を引き下げやすいこと,再雇用の選定基準を定め基準に満たない労働者の再雇用を拒否できるという企業側のメリットが大きいのです。

ですが,上記の記事によると,最近,継続雇用されなかった労働者が企業を訴える例が相次いでいるようです。これは,そもそも再雇用の選定基準が妥当か,当該労働者が基準に満たさないという判断が妥当か,基準そのものを決めた手続が妥当か,など選定基準を巡る争いが絶えないからです。しかも,まだ地裁レベルの判決がほとんどで学説を含め統一的な議論がまだ行われておらず,裁判所の判断もまちまちなようです。
実は,私も継続雇用を拒否された労働者の代理人として企業相手に交渉し,再雇用を確保した経験があります。その労働者の方は多少身体が不自由でしたが,再雇用を拒否されるような障害ではありません。企業側の経営不振や他社との合併などの影響で,再雇用者をなるべく減らしたいという意図が見え隠れしていました。

企業側は,再雇用の是非を巡る裁判が頻発している現状を見据え,妥当な選定基準を作成することはもちろん,基準についての労使協定の締結という手続の遵守,実際の再雇用時に公正な選定を行うなど,裁判に至らないよう十分に配慮する必要があります。

投稿者 弁護士 桑田 英隆 | 記事URL

2012年7月5日 木曜日

失敗の本質

こんにちは,桑田です。
今回のテーマは最近読みました本についてです。
プロフィールの趣味の欄に「読書 年間100冊近く読破しています」と大見得を切ってしまいました(^_^;)
というわけで,今回は趣向を変えてみましたので,お気軽にお読み下さい。

「失敗の本質」は,第2次世界大戦における日本軍の失敗の「本質」をつきとめようとした古典の名著です。昭和59年に発行された研究書ですが,最近,エッセンスを記載した「超入門『失敗の本質』」が売れ行き好調となり,再度,脚光を浴びています。

 「失敗の本質」の中で,日本軍敗戦の原因分析がなされています。
たとえば日本軍内に「戦略が・・・多分に情緒や空気が支配する傾向」という情緒的人間関係が気づかれたこと,「情報,諜報の活用という点では,米軍に比べ決定的に劣っていた」という情報の軽視,「失敗した戦法,戦術,戦略を分析し,その改善策を探求し,それを組織の他の部分へも伝播していくということは驚くほど実行されなかった」という学習の軽視などが挙げられています。
そして,「日本軍の組織原理を無批判に導入した現代日本の組織一般が・・・危機が生じたときは,大東亜戦争で日本軍が露呈した組織的欠陥を再び表面化させないという保証はない」とも書かれています。

昨年,東日本大震災,原発事故という「危機」が生じました。
昨日の原発事故調査委員会の報告書では「明らかに人災」と指摘され,その理由として,規制当局と東京電力の立場が逆転し,
地震・津波対策を立てる機会が過去何度もあったのに先送りしてきたと指摘されています。まさに,情緒的な人間関係や学習の軽視と言われても仕方がないのではないでしょうか。
自戒の意味も込めて,とても考えさせられた一冊でした。

  

投稿者 弁護士 桑田 英隆 | 記事URL

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