弁護士桑田の活動日誌
2012年6月21日 木曜日
マンションの管理費等の相殺はできるか
こんにちは,弁護士の桑田です。
今日はマンションの管理費や修繕積立金の支払を拒絶する区分所有者からの相殺の主張が認められるか,についてです。
この問題については東京高裁平成9年10月15日判決がありますので,そのケースで説明します。
この判例の事案は以下の通りです。
マンションの区分所有者が,平成5年から8年にかけて,一般管理費,積立金等を支払を拒絶したために管理組合がその支払いを請求して提訴しました。これに対して,区分所有者側は,「害虫被害等を放置できないので共用部分の樹木を剪定し費用を負担した。その費用の償還請求権と管理費等の債権を相殺する」というものでした。
では,このような区分所有者側からの相殺は認められるでしょうか。判例は,相殺を明確に否定しています。
どうして,相殺できないのでしょうか。
実は,その債務の性質上許されないときには相殺はできません(民法505条1項但し書き)。たとえば,教科書事例ですが,AはBのために収穫時期に2日間働く,BはAのために3日間働くという契約をしたときAが相殺を主張としてBに一日だけAのために働け,と要求することはできないのです。
東京高裁は,マンションの管理費等についても,その性質上,相殺は認められないと判示しています。「マンションの維持管理は区分所有者の全員が管理費等を拠出することを前提に集団的,計画的,継続的に行われる」「区分所有者の一人でも現実にこれを拠出しないときには建物の維持管理に支障が生じかねず,区分所有者全員が不利益を被る」「このような相殺はその性質上許されない」としています。
ようするに,管理費や修繕積立金は実際に拠出されないと区分所有者全員の不利益となるという性質から,相殺が否定されたわけです。当然と言えば当然ですが,それだけ管理費,修繕積立金はマンション運営の要ということなのです。
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