弁護士桑田の活動日誌
2012年6月28日 木曜日
マンション内の言動による名誉毀損
こんにちは,弁護士の桑田です。
今日のテーマは,マンション内の言動が名誉毀損になるかどうか,です。
名誉毀損の成立は,マンショントラブルにかかわらず,弁護士として非常に多く相談を受けるところですので,判例を紹介したいと思います。
なお,前提知識として,外形上名誉毀損行為がなされても,「公共の利害に関する事実」について「もっぱら公益を図る目的」に出た場合,「摘示された事実が真実と証明されたとき」は不法行為は成立しないとされています。また,そのような証明がなくても「行為者において真実と信ずるについて相当の理由があるとき」も不法行為は成立しないというのが,最高裁の確立した判例です。
以上を前提に,裁判の事案を見ていきます。東京地裁平成7年11月20日判決は,マンションの区分所有者の一人が,管理委託会社について「一部の理事と結託して管理委託契約を締結した」とか「この会社の内容は,管理組合の預金証書と印鑑を一緒に預託できる程ではない」という文書を各戸に配布したというケースです。
外形上名誉毀損行為に該当することは否定できないでしょう。ですが,管理組合の運営という「公共の利害に関する事実」について真摯に管理組合のことを考えて「もっぱら公益を図る目的」に出たもので,「真実あるいはそのように信じたことに相当の理由がある」等として不法行為の成立を否定しました。
また,横浜地裁平成9年5月9日判決は,マンションの区分所有者が管理組合総会の席上で理事長の名誉を毀損する内容の文書を配布し「従来の自主管理の方法は独善的,威圧的」等と記載してあったことについて,次期理事長選挙という公共の利害に関する事項について,もっぱら公益を図る目的でなされた等としてやはり不法行為の成立を否定しました。
このように見ていくと,個人攻撃ではなく,マンション全体の公共的な事実について,その管理を向上させるという公益的目的を持って行っている場合には,真実あるいはそのように信じたことに相当の理由があれば名誉毀損が認めがたいということになるかも知れません。
ただし,私は,だからといって,憶測や感情に基づいて,他者を誹謗中傷するような発言は避けるべきと考えますし,まして,各戸に厳しい論調の文書を配ることは控えるべきだと思います。同じマンションで生活しているのに,裁判になるほど感情が対立するのではマンション管理の阻害要因となることは明らかですし,上記判例では名誉毀損にならなかったとからと言って,別のケースでも不法行為が否定されるとは限りません。理事会に対する問い合わせや管理組合総会での(冷静な)指摘を通じて解決を図ることが先決なのだと思います。
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