弁護士桑田の活動日誌
2020年10月21日 水曜日
遺言,遺産分割協議書の偽造
皆さん,こんにちは,弁護士の桑田です。
今回のテーマは,遺言や遺産分割協議書が偽造された場合の対応です。
皆さんは,遺言や遺産分割協議書が偽造されることはめったにない,と思われているのではないでしょうか。
確かに頻繁に起こることではありませんが,私は,遺言の偽造事件も,遺産分割協議書の偽造事件も扱ったことがあります。
当然,相手方は偽造したことを素直には認めません。そのため,準備や対策が必要となります。
私が過去に扱った遺言の偽造事件は,兄弟の一人が親の遺言を偽造し,別の兄弟が遺言無効を主張していた事案です。
第一審では別の弁護士が原告の代理人でしたが,遺言は偽造でないと判断されてしまい,納得できない原告が控訴し,私が新たに控訴審の代理人を担当しました。
偽造かどうかを判断するには,筆跡鑑定のほか,遺言が作成されたとされる当時の状況つまり作成場所,作成時間,作成時に誰が遺言者の近くにいたのか,作成の方法,遺言の内容などをもとに遺言作成状況の合理性を慎重に検討することになります。
第一審でも筆跡は問題となり鑑定も行われていましたが,親は高齢で利き手の右手が不自由になり,遺言書を書いたとしたら左手しかなかったにもかかわらず,第一審ではそのような事情は明らかにならないまま,遺言の筆跡が過去の遺言者の筆跡と似ている似ていないといった議論に終始していました。
そこで,私は,それらの議論では今回の偽造は判断できないことを主張した上で,作成場所である病院の看護日誌から作成日には遺言に立ち会ったと主張するされる相手方が来院しているはずがないこと,病院の図面をもとに看護士らに見られずに相手方が病室に入ることは不可能であることなどを主張しました。
その結果,遺言書の作成についての相手方の説明は不自然であることが浮き彫りになり,当方に有利な和解を行うことができました。
もう一つは,兄が,妹との遺産分割協議書を偽造し,その遺産分割協議書を利用して,死亡した親の所有する土地建物等を売却してしまったという事例です。
私は,妹の代理人として,損害賠償請求をしました。
偽造が判明した経緯は,親の所有していた建物の取壊しが行われたことに妹が気づいたことです。
妹から相談を受けた私が法務局にて遺産分割協議書を閲覧したところ,全く妹の身に覚えのない協議書が出てきました。
協議書の妹の氏名の筆跡は兄嫁ではないかということで,兄嫁の筆跡のある書類を徹底的に探し出し,比較対照して,協議書の筆跡が兄嫁で間違いないと確認しました。
遺産分割協議書の作成には実印が必要ですが,妹には印鑑登録をした覚えはないとのことでした。ですが,兄から「親の保険の解約に必要」と言われ,住基カードを渡したことがあるとのことでした。
そのため,住基カードを利用して妹名義の印鑑登録を無断で行い遺産分割協議書に押印したと判断しました。
訴訟でも偽造が激しく争われると予想しましたが,相手方代理人は偽造を争うことが困難と判断し,最初から偽造を認めてきました。
その結果,兄が妹に相当額の支払いをすることで和解して解決しました。
このように,遺言や遺産分割協議書の偽造の立証は簡単ではありませんが,詳細な検討を加えることで立証に至ることが可能なのです。
もっとも,このような作業は一般の方には困難と思われますので,偽造のトラブルに巻き込まれた際には,当職にご連絡ください。
丁寧に対応させていただきます。
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