弁護士桑田の活動日誌
2012年9月5日 水曜日
マンション内でのビラ配りによる誹謗中傷
みなさん,こんにちは,弁護士の桑田です。
今回のテーマは,マンションの区分所有者が,管理組合の役員を誹謗中傷する文書を配布した場合の対処法です。
マンション内でこのようなビラ配りや各戸に配布するなどの行為は決して珍しいものではありません。
また,実際に役員が管理費を横領するなどしている場合に,その不正を正すために行ったのであれば違法とは言えません。
一方で,マンションの区分所有者の中には,単に感情的な理由から,何の根拠もない誹謗中傷を役員に対して加える例も少なくありません。このような場合には,誹謗中傷された被害者がそれぞれ差し止めや損害賠償請求をすることは当然可能です。
では,各被害者ではなく,加害者を除く区分所有者全体を主体として,そのような行為の差し止めを行うことができるのでしょうか。もし,可能であれば,いちいち各個人が請求しなくても,被害行為を一括して差し止めることができますし,その後,場合によっては,加害者による専有部分の使用を禁止したり,加害者の区分所有権を競売請求できるなどのメリットも出てくるのです。
区分所有者全体を主体として差し止めを行うには,特定の個人に対する誹謗中傷の域を超えて「建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為」(区分所有法6条)に該当することが必要になります。
近時の最高裁判例が,類似の案件について注目すべき判断をしています。すなわち「それが単なる特定の個人に対する誹謗中傷等の域を超えるもので,それによりマンションの正常な管理又は使用が阻害される場合には,区分所有法6条1項所定の区分所有者の共同の利益に反する行為に当たるとみる余地がある」と判示しました。
したがって,誹謗中傷する文書を配布した場合に区分所有者全体を主体として差し止めることができる場合があります。ただし,「共同の利益に反する行為に当たると『みる余地がある』」との表現ですので,常に認められるわけではないことに注意が必要です。
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