弁護士桑田の活動日誌
2018年2月26日 月曜日
認知症と裁判を受ける能力
皆さん,こんにちは,弁護士の桑田です。
今回のテーマは,認知症の方などを被告又は原告とする裁判をどのようにして行うのか,ということです。
まず,前提として,裁判の当事者となるには,訴訟能力が必要とされています。また,民事訴訟法上,未成年者や成年被後見人は,法定代理人によらなければ訴訟行為をすることができない(訴訟能力がない)とされています。
ですから,未成年者が裁判を起こすには親などが,また,心神喪失の常況にあって被後見人となっている人が裁判を起こすには後見人が,裁判の当事者となります。
ですが,必ずしもスムーズに話が進むわけではありません。例えば,100万円を貸したが,借主が認知症になり心神喪失状態で,しかも後見人は申し立てられていないという事態があります。
このような相談があった場合,「相手方に後見人を立ててもらって,後見人を相手に裁判しましょう」と答えることもあるのでしょうが,相手方が自発的に後見申立てをしてくれるかは疑問ですし,時間も相当かかります。
そこで,このような場合には,民事訴訟法第35条によって,特別代理人選任を申し立てることが考えられます。
条文上は「未成年被後見人」とありますが,被後見人レベルまで認知が進んでいるが,そもそも後見の申し立てがなされていない場合も含まれる運用です。
ただし,「遅滞のため損害を受けるおそれがあること」を疎明しなければなりません。例えば,保全処分や時効を中断するための訴訟提起などですが,ケースバイケースでしょう。
また,民事訴訟法第35条には「未成年者又は成年被後見人に対し訴訟行為をしようとする者は」とありますので,条文上は,被告が認知症などの場合を想定しています。それでは,原告が認知症の場合はどうでしょうか。
例えば,おじいちゃんが同僚に100万円を貸しているが,おじいちゃんが認知症になって100万円を取り立てようとしないという場合です。実は,このような原告が心神喪失の常況にある場合でも,第35条が類推適用される例があるようです。
とはいえ,条文の表現などからすると,やはり相当の理由がないと原告側で特別代理人を選任されることは難しいかも知れません。
これから高齢化社会が本格化する中で,原告や被告が訴訟能力を欠くという事態も増えてくると思います。
そのような問題でお困りの方は,弁護士桑田までお気軽にご相談下さい。
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