弁護士桑田の活動日誌
2019年4月3日 水曜日
組合員名簿の閲覧を請求された管理組合の対応
こんにちは,弁護士の桑田です。
今回のテーマは,組合員から「組合員名簿を閲覧したい」という申し出があった場合に理事会としてどのように対応するか,です。
以前,会計帳簿の閲覧についてこのブログに載せましたが,今回は,組合員名簿についてお話しします。
まず,標準管理規約64条に閲覧の対象として組合員名簿と明記されていますので,多くの管理組合でも同じように組合員名簿の閲覧ができる規定になっていると思います。
そのような場合,管理規約の代表的な解説書であるコンメンタール標準管理規約では「組合員の住戸番号,組合員の氏名及び住所については,個人情報ではあるが,法務局での登記簿の閲覧等により誰でも知りうる情報である」旨述べて,閲覧できるとしています。
とはいえ,組合員に無限定に組合員名簿を開示することには躊躇を覚える理事長,理事の皆様も少なくないと思います。
組合員名簿の閲覧請求はそう多いことではなく,必ずしも正当な権利行使ではなく,何らかの不当な目的を疑わせる場合も少なくないでしょう。
この点,近時の裁判例(大阪高裁平成28年12月9日判決)は「社団の内部関係に関しては,一般社団法人法が類推適用されるのが法律学の通説である」として,組合員名簿の開示を原則としつつ,一般社団法人法32条3項に規定された例外を考慮すべきとしています(なお,判決の文脈は会計帳簿の閲覧の権利濫用との関係のようにも思われます)。
一般社団法人法に規定する例外は概ね以下のとおりです。
1権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき
2法人の業務の遂行を妨げ,又は社員の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき
3法人の業務と実質的に競争関係にある業務に従事しているとき
4閲覧によって知りえた事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき
5過去2年以内に4のような通報を行ったことがあるとき
ですので,閲覧を許可するかどうかについては,これらの点,特に,1,2については,閲覧目的等を慎重に検討することが必要です。
なお,上記の判例では,このような例外には該当しないとして,組合員名簿の閲覧を認めています。
長くなりましたので,今回はここで終わりとしますが,名簿の閲覧については,このほかに「どの範囲で開示させるのか」「謄写まで認めるのか」という問題があります。
というのも,組合員名簿には住所だけでなく電話番号や勤務先まで記載されている例があり,開示の範囲も悩ましいのです。
また,謄写との関係では,上記の判例は,会計帳簿についてですが写真撮影も認めていることを情報としてお知らせします。
このように,組合員名簿の閲覧を認めるかどうか,一般社団法人法の例外に該当するか,閲覧を認めるとしてもどこまで認めるか,謄写を認めるか,は微妙な判断が求められ,過去の判例や学説の理解が不可欠ですが,理事長や理事の方では判断が大変難しいと思われます。
そのようなときには,いつでも弁護士桑田にお気軽にご相談ください。
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