弁護士桑田の活動日誌
2020年10月13日 火曜日
賃借人が自殺したときの賃貸人(大家さん)の対応
皆さん,こんにちは,弁護士の桑田です。
今回のテーマは,賃借人が物件の中で自殺してしまった場合の賃貸人の法的対応についてです。
賃借人が自殺してしまった場合,賃貸人としては,様々な問題に直面することになります。
残置物をどう処理するか。また,自殺の仕方によっては,原状回復費用が発生することもあります。
例えば,裁判例の中では,お風呂の中で自殺した場合にユニットバスそのものを交換した例があります。
広範囲に付着した血のりの除去が必要なこともあります。
自殺される賃借人は経済的に困窮している方も多く,賃料の滞納が発生している例もあるでしょう。
そして,なんといっても,最大の問題は,その物件が事故物件扱いとなり,借り手がつかないとか,賃料が減額されることです。
このような将来得られたはずなのに得られない利益を逸失利益と言います。
では,これらのトラブルに対して,賃貸人はどのように対応することになるのでしょうか。
まず,行うのは賃借人の相続人を調査することです。残置物は,相続人に引き取ってもらうことになります。
次に,逸失利益,原状回復費用,滞納賃料等の請求は,誰に対してどのように行うのでしょうか。
その前提として,賃借人は,一般に善管注意義務の一環として,物件内で自殺しないようにする義務もあります。
賃借人はこの義務に違反しているので,賃貸人は債務不履行に基づく損害賠償請求が可能となります。
そして,賃借人は死亡しているので,その相続人又は保証人にこれらの損害賠償を請求することになります。
ただし,相続人が相続放棄してしまっている可能性もあることに注意して下さい。
では,逸失利益はいくらになるのでしょうか。
近時の裁判例をいくつか確認したところ,都心で交通の便が良く流動性が高い物件との前提ですが,おおむね「1年間は借り手がつかず賃料不発生,その後2年間は賃料半額」と評価しているようでした。
もっとも,将来の賃料をを現在一括しての支払いを請求することから,中間利息を控除する扱いになります。
中間利息の控除についての説明は割愛しますが,3年程度ですと,おおよそ9掛けくらいです。
例えば,家賃が10万円とすると1年分で120万円,2年目と3年目が半額なので合わせて120万円,合計240万円を回収できない賃料と評価し,これに9掛けして,約216万円が逸失利益として認められます。
そこに原状回復費用などを足して損害額を計算することになります。
もっとも,相続人を調査したり,これらの請求を行うことは賃貸人にとっては大変な作業と思いますので,当職にお気軽にご相談ください。
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