弁護士桑田の活動日誌
2021年4月22日 木曜日
クレーマー住民への具体的対処法(意見書対応篇)
皆さん,こんにちは,弁護士の桑田です。
今回のテーマは前回に引き続き,クレーマー住民(トラブルメーカー)への具体的対処法です。
前回,書かせていただいたとおり,今回からは,具体的な事例を挙げて対応を説明したいと思います。
まず,意見書への対応です。
分譲マンションの中には,「意見書」「要望書」などを用意して,住民が管理組合や理事会に自由に意見を表明できるようにしているところも多数あります。
このような取り扱い自体は,決して悪いことではありません。
ですが,いわゆるクレーマー住民は,これを利用して,大量の意見書や要望書を理事会に出してきます。
その内容も極めて独りよがりで,他の住民の賛同を得られないような極端な意見ばかりです。
そして,クレーマー住民からは「何日以内に回答せよ」とか「必ず書面で回答すべし」とか「理事長が直接,説明に来い」といった回答の要求が出されることもしばしばです。
また,「理事長や理事は管理組合から委任されているから,組合員である自分にはいつでも説明を聞く権利がある」とか「役員には善管注意義務(善良なる管理者の注意義務の略です)や誠実義務があるから,誠実に回答しろ」といった理屈を言ってくることもあります。
私がみるところでは,理事会の皆様も管理会社の担当者の方もとてもまじめで,クレーマー住民のいうことを全部聞いて,何とか対応しようとしています。
そして,クレーマー住民からの要求がどんどん激しくなって,困り果てて,私のところに相談に来られるのです。
ですが,結論としては,このような対応は適切とは言えないでしょう。
まず,理屈についてですが,確かに管理組合の役員には善管注意義務や誠実義務はあります。しかし,個別の要求に常に対応しないと義務違反になるというわけではありません。
また,管理組合と個々の組合員は別の主体です。むしろ,役員は管理組合から委任を受けているのであって,個々の組合員から委任を受けているわけではないのですから,「管理組合から委任を受けているから,組合員にその都度説明しなければならない」という関係にはないのです。
ですので,クレーマー住民のいう理屈は,実際には論拠とはいいがたいのです。
では,どうすればよいのでしょうか。
ここで,総論での説明を思い出してください。
管理組合や理事会には一定の裁量があります。
つまり,意見書が出されて回答を求められたときに,回答するかどうか,どのような方法で回答するか,どの程度の分量の回答をするかは,理事会で決めてよい事項です。
ケースバイケースですが,クレーマー住民の独善的な意見については,「意見は意見として聞き入れながら,それ以上の対応はしない」ということも十分にあるでしょう。
ただし,中には「どうして,返事をしないのだ。おかしいではないか」と繰り返し,クレームをつける方もいます。
もし,管理組合や理事会で対応に苦慮される場合には,私にご相談ください。
例えば,相談を受けた後に「弁護士に相談したら,対応しないでも良いと回答してくれた」と言える場合もあるでしょうし,執拗な場合には私が委任を受けてクレーマー住民に対し「私が受任しました。今後は理事会にこの件で連絡しないように」と通知する対応も考えられます。
いずれせにせよ,あまり深刻になる前に,お早めにご相談ください。
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