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弁護士桑田の活動日誌

2015年1月5日 月曜日

マンションの理事長や理事の義務違反

皆さん,こんにちは,弁護士の桑田です。
 今回のテーマは,マンションの管理組合の理事長やその他の理事がどのような責任を負うのかです。特に善管注意義務についてお話ししたいと思います。

 マンションの管理者は,管理組合から委任を受けてその業務を行います。そのため,区分所有法28条は民法の委任の規定を準用しており,その一環として「その職務を行うについて善良な管理者としての注意義務」つまり善管注意義務も準用されています(民法644条)。通常,管理者は理事長ですが,他の理事も管理組合から委任を受けているのですから,善管注意義務を負うことは理事長と同様です。

 理事長や理事の善管注意義務違反に関する裁判例として,東京地裁平成17年2月22日判決を紹介します。この裁判例は,管理会社が組合員から集金した管理費,修繕積立金を流用していたことについて,会計担当理事が流用を把握せずに漫然と管理会社に催促していただけであることや,会計担当理事を監督すべき理事長も管理会社からの入金が滞っているとの報告を受けていたにもかかわらず何らの方策も指示しなかったことなどから,両者の善管注意義務違反を認めました。もっとも,この事案では紛争の経緯から「本件マンションの区分所有者らが本件マンションの管理運営に対する無関心から,被告ら(理事長,会計担当理事)に多大な負担が生じている状況を見過ごし,マンションの管理・運営を被告らに任せきりにした面も否めない」として,過失相殺の法理から理事長らの責任の8割を減額しました。

 このことから,理事長や理事は漫然と管理するだけでは善管注意義務違反に問われる可能性があること,一方,個々の区分所有者もその「無関心」によって自らも責任を負担しなければならない可能性があることが分かります。

 また,本件は管理会社の流用という問題でしたが,理事長の善管注意義務違反は,たとえば管理費や修繕積立金を5年間の時効にかけてしまったような場合でも問われる可能性は否定できません。管理費等の滞納問題は後回しにせず,できる限り早期に回収を図るべきなのです。

その他のマンショントラブルについては以下をご参照下さい。
 マンショントラブル全般は
http://www.kuwata-lawoffice.net/manshon/
マンション住戸の目的外使用は
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2013/03/post-47-466985.html
 マンション内の騒音問題は
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/05/post-7-272598.html
 マンション内の水漏れ事故については
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/08/post-31-328055.html
 マンション内での誹謗中傷については
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/09/post-1-342591.html
 管理組合の理事長を解任する方法については
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/07/post-25-310679.html
 マンションの構造などに欠陥がある場合の損害賠償は
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/07/post-1-307678.html 
 マンション管理士については
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2013/07/post-51-568373.html
 マンション管理組合や理事会と管理会社の間のトラブルについては
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2014/03/post-55-779280.html

投稿者 弁護士 桑田 英隆 | 記事URL

2015年1月5日 月曜日

不良なペットの飼い主への対応顛末

皆さん,明けましておめでとうございます。
弁護士の桑田です。
本年もマンションの問題をはじめ,法的トラブルの解決に積極的に取り組んでいきますので,皆様,今年もよろしくお願い致します。

さて,新年最初の話題は,ペットの飼育が不良な区分所有者や賃借人への対応です。今回は,私が,昨年,一昨年を通じて取り組んだ実際の事案を基に,具体的にどのような解決を行ったのかについて,説明したいと思います。

本件はマンションの1室において,区分所有者からその専有部分を借りている親族らが,数年にわたり20匹前後の猫をほぼ放し飼いで飼育していた事案です。悪臭にたまりかねた管理組合からトラブル解決の相談を受けました。
実際にそのマンションを訪問しますと,エントランスですら獣臭が漂い,飼育している専有部分の前では,マスクを何枚も重ねているにもかかわらず強烈な悪臭に襲われました。

これまでの話し合いの経緯から,単に交渉しただけでは解決に至らないことが予想されました。といっても,区分所有者(の親族である借主)ですし,常に強硬な解決が望ましいわけでもないため,まずはペット飼育禁止の仮処分を申立て,裁判官を交えて話し合うことで解決の道を探りました。ですが,残念なことに,全く話し合いにならず,裁判所が飼育禁止の仮処分を出した後も改善されませんでした。

そのため,区分所有法第60条第1項に基づく占有者に対する引渡請求と,管理規約に基づく弁護士費用等の請求を求めて訴訟を提起しました。被告は,借主と,区分所有者の双方です。実際には区分所有者も借主も裁判を欠席したため,当方の言い分とおりの判決が出されました。

もっとも,判決が出ても猫の飼育が終了しなければ何の解決にもなりません。そこで,次は,建物明渡の強制執行を申し立てました。実のところ,建物明渡が一番難航するのではないかという予想もありました。通常は強制執行の当日までに自主的に退去していることが多いのですが,この事案では退去されない可能性があり,その場合には,強制的な退去と室内の動産類の保管及び処分という手続が待っています。ところが,本件では非常に幸運なことに,借主の親族の中に大変良心的に関わってくれる人物が現れ,その人物の協力で強制執行の当日までに明渡を終えてくれていました。

ただし,その時点では占有者から引渡を受けただけですので,ほどなく所有者に引き渡すのが原則です。そして,所有者は不良な飼い主の親族ですので,まだ不安が残ります。そこで,この事案では弁護士費用等の損害賠償請求も認められていることを利用して,損害賠償請求権を請求債権として専有部分の競売の申立てを行いました。このときにも,上記人物の協力を得られて,競売に至る前に任意に売却し,管理組合が要した費用もほぼ満額回収することができました。

この事案では,ペット問題で考え得るいくつもの手段を活用して,最も良い結果に帰着したと思います。ですが,相手方の親族の中に常識をわきまえた協力的な方がいたという稀有な例でもあります。これほど円滑に根本的な解決をすることができることは大変幸運なことですが,マンション管理に関わる者として大変やりがいのある事件でした。

その他のマンショントラブルについては以下をご参照下さい。
 マンショントラブル全般は
http://www.kuwata-lawoffice.net/manshon/
マンション住戸の目的外使用は
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2013/03/post-47-466985.html
 マンション内の騒音問題は
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/05/post-7-272598.html
 マンション内の水漏れ事故については
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/08/post-31-328055.html
 マンション内での誹謗中傷については
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/09/post-1-342591.html
 管理組合の理事長を解任する方法については
http://www.kuwata-lawoffice.net/blog/2012/07/post-25-310679.html
 マンションの構造などに欠陥がある場合の損害賠償は
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 マンション管理士については
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 マンション管理組合や理事会と管理会社の間のトラブルについては
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投稿者 弁護士 桑田 英隆 | 記事URL

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